【療養休職中に解雇 従業員は休職の要因はパワハラと主張】
【経緯】
従業員Aさんは、5年前にタクシー会社B社に入社し、働いていました。
しかし、営業成績が上がらず、部長から「挨拶がなってない。売上げをもっと上げろ」などと、厳しい叱責を受ける日々が続いていました。
体調を崩し、会社を休みがちになったため、いったんは解雇通告を受けましたが、その後の話し合いで、休職して療養に専念することになりました。
しかし、休職中に連絡があり、約1カ月後に雇用契約を終了するので、退職願の提出と健保被保険者証の返納をするよう求められました。
話の急展開に納得できず、Aさんは紛争調整委員会にあっせん申請することにしました。
※あっせんとは
紛争当事者の間に公平・中立な第三者として労働問題の専門家である「あっせん委員」が入り、双方の主張を聞き、問題点を整理しながら、労使双方で自主的解決が図られるよう調整を行い、紛争の解決を図る制度です。
【従業員の言い分】
欠勤が増えたのは、部長から執拗なパワーハラスメントを受けていたのが原因です。
主治医からは休業を命じられ、傷病手当金を受けながら生活している状態でした。
実質的な解雇なので、解雇予告手当30万円、年休残日数15日の買取分20万円、およびパワハラの慰謝料50万円の計100万円の支払いを求めました。
さらに退職理由は、自己都合ではなく会社都合に改めるのが当然と主張しました。
【会社の言い分】
就業規則では、「休職期間は3カ月を限度とし、回復しない場合には自己都合退職とする」と定めてあり、それに沿った措置を採ったまでと主張しました。
解雇通告ではなく、本人から連絡がない状態が続いていたので、会社から就業規則に基づく退職の連絡をしました。
従業員の主張に基づき社内調査を実施しましたが、部長のパワハラについては事実を確認できませんでした。
このため、会社としては金銭解決には応じてもよいですが、自己都合退職を撤回するつもりはありませんでした。
【労働局・紛争調整委員会の指導・助言の内容】
労働契約を終了させる点については、労使間で争いがなかったので、解決金の額と退職理由に関して意見調整を図りました。
パワハラの事実については事実証明ができないため、それ以外の点でお互い譲歩できる部分がないか、両者に再考を促し、粘り強く合意点を探す努力を継続しました。
【結果】
Aさんが自己都合退職として退職願を提出し、会社が45万円を支払うことで合意が成立しました。
~本トラブルについて~
就業規則に休職期間を定めていたので、会社側は退職を言い出すきっかけがありました。
大企業は年単位で休職期間を設けている所もありますが、中小企業では3カ月~半年のところも多いでしょう。
おそらく当従業員はうつ病と思われますが、うつ病の回復に3カ月は厳しいでしょうね…。
合意はされましたが、従業員はパワハラを認めさせたかったのでしょう。
ちなみに傷病手当金金を受けながら休職している間も、社会保険料は免除される訳ではなく支払う必要があります。
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